ブログに書くのもおかしな話だが、私は手紙をしたためるのが好きだ。目で見る手書き文字には力があると思う。それに加えて、絵葉書や便箋を手にとって、ペンを選んで、きちんとした字を書くことに気をつけながら、そして書き進めるにつれて面倒くさくなってきて字が荒れることも含めて、楽しい。
手紙を受け取り筆跡をたどると、相手が書く言葉に迷う姿が目に浮かぶ。届いた内容に至るまでの労をかけてくれたことをうれしく思う。使う紙や、ペンには、LINEのスタンプとは違うニュアンスがある。ざらつきが、残る。手紙が届いたときの風景や匂いも私にとっては大事だ。なんと表現したらいいのだろうか、現実の手触りとでもいえるだろうか。 携帯電話が、メールが、なかった時代の恋に時々あこがれることがある。待つ時間は、いらつきを感じたりもどかしく相手をせかす現代の時間とは違う質を持っていたと思うから。 時たま手紙を書く事について同意してくれる人がいる。しかし、そういう友人たちは、才能あふるるゆえに自身の生活に忙しくしており、文通が長続きするというまでには至らない。というわけで、しばしば手書きの文章というものからは、遠ざかりがちだ。 だから今、ペンと便せんに触れる機会があるだけで、そういう機会と関係性を持てていることに思いを馳せるくらい、感慨深い。
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苦学生ごっこをして1ヶ月が経った。
ごっこ、というのは学生ローンや最終兵器「親の財布」すらちょっと頑張れば使えるという恵まれた境遇にもかかわらず、自費で留学するという無茶をしでかしたからだ。奨学金は、全て落ちた。親にはこれ以上面倒をかけたくないのと同時に口出しされるのを恐れている自分がいた。 イギリスは物価と家賃が高い。一年だけの留学にもかかわらず車を買ったり毎日デリバリーの中華を学校に配達してもらっている中国人留学生の羽振りの良さは傍に置いておくとしても、奨学金を給付されているコモンウェルス加盟国や経済的後進国の学生のほうが、私よりかはいい生活をしてるように見える。 奨学金が取れるほどに優秀でなくても自分の希望するプログラムを求めて海外大学院まで来れてしまうこと自体が豊かさなのは頭が十分に理解している。してはいるが、わびしい気持ちというのは寒い日暮れには身にこたえる。また、学費半額かそれ以下の英国・欧州の学生に飲みに誘われるたびに貧しい気持ちになる。 また、衆議院選挙が終わって日銀が疲れを見せはじめたのか、逆に力を入れだしたのか。円が弱くなってきている。しかし数年のチャートを眺めていると、今はまだマシ、という虚な慰みをうけ、金銭を支払うモチベーションが多少湧いてきた。同じように、本代がかさむのも、夏目漱石の感じた書籍の高価格よりはマシか、というよくわからない言い訳で自分の善良な吝嗇さを騙し騙し、アマゾンに貢献している。日本国外に初めて住んでみるという体験は、予期せずそんな自分の経済への疎さを叱咤してくれているようだ。 改めて、私が今滞在している場所はブライトンという学生や若者に居心地の良い中規模の街の周辺だ。ヒップな街とはこういうところをいうのだろう。一旦市内に出ると、カフェやアートクラフトの個人経営店、ビーガン・ベジタリアン食はどこにでもあり、街の中心の教会前の芝生ではビンテージっぽい服をきて、髪を青や緑に染めた痩せ型の白人カップルがコーヒーをのんでくつろいでいる。海辺は大変綺麗で、大分と寒くなってきてからも少しでも日がさしてくればそこここで話に花を咲かせる人々を目にする。物価がロンドンほど高くないがロンドンには出やすく、大きなLGBTQコミュニティに代表される寛容性(少なくともジェンダーに関しては)があるブライトン。学生やアーティスト、そしてスローライフを重視する人には本当に住み良い街だと思う。 ちなみにベジタリアンやビーガン食は、大学の食堂でも完全対応されている。私のいるコースも「ガツガツしてない、共感力高め」な種類の人間の集まりなので、ビーガンやベジタリアン率が異常に高い。(マック/Apple製品保有率も高い。) これがイギリススタンダードと思ってはなるまい。一度、イギリスの中央値の生活を見に行かねば、と自分に言い聞かせている。もう一つついでに言うと、ビーガンは先進国の教養のある層の贅沢な習慣だと思っている。もちろん地球にいいことをするのはいいことだ。私も80%菜食程度の生活をしている。ここに、菜食主義、ではなく嗜好と所得の問題として、と注意書きを入れておきたい。私は確固としたイデオロギーを持てるほど勤勉ではない。 こんなに中国人留学生が多いにもかかわらず、中華はない大学カフェテリア。にもかかわらずベジ食は完備ということは、学生が声をあげて求めた、ということだろう。 宗教の関係などで生まれついた習慣でないものを自分の意志で選択し、自分を律することができる人は、声の大きい人でもあるようだ。 |
Hrk writes. 両極端の、どちらも自分 Archives
November 2021
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